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HARADAプライベイト

見ろ、あれが俺らが探していた両国国技館だ。見ろ、あれが俺らが憧れた力士だ。見ろ、あれが俺らが恋い焦がれたちゃんこ鍋だ。みろ、あれが俺らが求めていた力士の(やけに美人な)嫁だ。

サインの練習

最近はサインの練習を中心に生活している。100均で色紙を使って、練習をしている。

サインボールを使って、練習をしている。

急に頼まれてもいいように、表紙の柔らかい手帳にも、簡単なメモ帳にも、いつでも対応できるように練習をしている。

ティッシュにも。

ティーシャツにも。

サインはどこにでも書かなければならない、より正確に、より美しく。

私がそんな風に急にサインを練習し始めたのもある話があるからだ。

 

以前、彼女と本屋と併設されているカフェに行った時、ああ、名前をはっきりと書くとアレだからぼかして言うと、スター○バックスとツ○タヤが一緒になったお店だ、すごくオシャレで、オシャレモンスターがいっぱいゲットできそうなあのオシャモンGO、みたいな。

 

そのお店で本を読みながらくつろいでいたところ、世界的にも有名な大スターを見つけた。それはもう大スターで、世界記録を持つほどの大スターだ、大スターって本当にいい響きだ。

 

そのとき大スターは何かしらの本を探していて、何やら店員とやりりをしている、ごちゃごちゃとした雰囲気に気づいた私は何の気なしに大スターと思わずその大スターの方をパッと見るとそこには大スター。思ったよりも背が高かった。

 

私は初めて大スター生で見たものだから興奮していたが、そこは大スターのプライベートの時間。そんな時間を私のような人間が脅かしてはいけない、私は努めて冷静に、小さな声で彼女に大スターがいることを伝えた。

 

彼女も大スターだとすぐに分かり、興奮収まらぬ様子であったがワイワイとは騒ぎ立てず、チラチラとその大スターの一挙手一投足一本足を気にしていた。

 

しかし、興奮冷めやらぬ彼女はついに「サインをもらおう」と提案し始めた。もちろん、私はその大スターのサインが欲しかったし、大スターと一度お話ししたかった、お風呂だって入りたいし、朝まで飲み明かして、将来の夢とか語り合いたい、あとホームランの打ち方を教えてもらいたい。

 

私は悩んだ、大スターのプライベートを取るか、自分の欲求を取るか、一生に一回会えるか会えないか、それくらいの大スターだ。ミュージアムができるくらいの。

 

最終的に、私はサインをもらうことを辞め、大スターのプライベートな時間を大切に過ごしてもらうことに決めた、もちろん、彼女とはモメた。彼女の気持ちはこっちを向いていなかった、向こうを向いていた、野球でいうと左バッターが不利になるように極端に右寄りのシフトを敷いていたようなものだ、あの有名な王シフトのような。

 

私は怒った彼女をなだめるため、ある対策を練った。そう、私が大スターのサインを書くということである、私は持っていたスマートフォンをすぐさま取り出し、「大スター サイン」で検索、ものの数秒で大スターのサインがごっそり出てきた。たぶん少なくとも868画像はあったと思う。

 

その中でも大スターのサインの真横に大スターの書いたであろう字で「信ずる道を」というコメントが書いてあったものを引っ張り出し、彼女の手帳に、丁寧に、まるで自分が大スターになったような気持ちになって、書いた。89も忘れずに書いた。

 

私の魂が乗り移ったのか、彼女は私のサインを見るなり安心したように静かに眠りについた。ああ、なんだ、眠かったのか、そうかそうか、、私は一安心して、また本を読み始めた。

 

そんなことがあったのである。だからこそ、いつなんどき、どんな場所でも大スターのサインを求められてもいいように、私は大スターのサインの練習をする。

 

誰に何を言われても、それでも私は大スターのサインの練習をする。

 

ありがとう、私の大スター。

 

またいつか、会う日まで。。。