ハラダプライベート

まっこと愉快なプライベート空間

ゴオルデンウイイク

なにもない日々が、ふと教えてくれることがある。

GWに入るにあたり、俺の予定はどんどん埋まっていった、飲み会の予定・彼女との旅行の予定・またまた飲み会の予定・あいだに親との時間、他にも隙間に入れれるだけ入れようともくろんでいた。転勤で東京に来てから初めての大型連休だ、ありがたいことに有給も取得できて10連休という夢のような長期の休暇となる。ゆっくりする暇もないほどに楽しもうと、そんなことばかり考えていた。

しかし、そんなワクワクもあることがきっかけとなってすべて崩れ去った。

GWの初日、念のため1日予備費として予定を空けていた。空けておいてよかったというべきか、休み前日に仕事が終わらず休日出勤をすることになったため、午前中から昼にかけて会社へ向かうことになった、その後一旦自宅へ戻り翌日からの帰省に備え部屋の掃除と洗濯を済ませることに。

夜はどうしたかというと、数日前から大学の先輩とGWの初日に行けたら飲みに行こうと軽く話しており、当日先輩がたまたま近くに来る用事があったため、それなら飲みに行きましょうということになった。

先輩は就職から東京にきて、もう4年が経つ。大学時代はよく二人で会うこともあって本当に仲良くさせてもらっていたが、いろいろあって自分と同じタイミングで就職を決めてからは距離的にどうしても会うこともなくなってしまい、たまの年末年始とかお盆とか、そんな時に二人以外の大勢の飲み会で一緒になるくらいだった。

飲み屋に向かう道中、二人で飲み屋で飲むなんて初めてかもしれないという話で少し盛り上がる、それもそうだ、思い返せば二人で飲みに行くなんてなかったような気がする、会うとすれば当時も一人暮らしだった俺の部屋で宅飲みしたり、ファミレスで飯食ったり、まともに居酒屋に行くようなこともなかったな。

とはいっても数年のブランクがあるとか、実は二人で居酒屋が初めてだとか、そんなもんは全く関係のないほどに先輩との話は盛り上がった。とても楽しく、当時と変わらないテンションで久しぶりに時間を忘れるような感覚だった。

何度かトイレに行って、ほろ酔い気分でいい感じになってきた頃。なんとなく自分のポケットに手をやると少し違和感を感じた。

いつもならお尻のポケットに財布を入れているのが、無い。

他のポケットも探ったが、無い。

酔いがみるみる冷めていった。

トイレにあるかもしれないと思い、トイレも見たが、無い。

先輩が言うには部屋に忘れてきたんだろうと、確かにその可能性も十分にある、でも財布を忘れるなんてほとんど経験がない、そもそもケータイと財布とカギしかポケットに入れていないから、ないなら部屋を出る時に気づくはず、かなり嫌な予感がした。

ひとまず飲み会を終え、店を出る時にも店の人に忘れ物を確認したが、財布の落し物はないとのことだった。

俺の家で飲み直そうということになり、嫌な予感をかかえつつ部屋に戻り部屋の心あたりのあるところを探したが、無い。

結局警察に遺失物届けを出すことに、警察にも届けられていなかった。

部屋に戻り飲み直すことにはなったが、テンションの下がった自分に影響されてか、酔いも回ってか、先輩は30分もしないうちに眠りについた。

思い起こせば、大学時代も今日は語りあかそうとやってきた先輩が宅飲み開始1時間もせずに寝入り、朝方8時頃に起き、すぐに帰ったこともあった。よく寝る先輩だった。

俺は単純に無くしたショックと、見つかったと警察から連絡が来るのではという淡い期待で、眠れずにいた。

しかし、翌日は早朝から帰省する予定だ、変に眠れずにいるよりは無理矢理にでも寝たほうがいい、とりあえず銀行カードを止める手続きを行い、眠りにつくことにした。

 

翌日の7時頃に起きた、寝起きの悪い自分がウソのようにスッと起きることできた。起きるなりケータイをみるが警察からは連絡が来ていない、見つかってないのだろう。奇跡を信じて部屋をもう一度見回すが、やはり無い。

諦めが悪いやつだと思いながらも警察に電話する、やはり届け出はないとのこと。がっくりと肩を落とした。

そうこうするうちに先輩も帰り、自分もこんな状況だけどとりあえず地元に帰ろうと思い、通帳を持って部屋を出た。カードは止めたが通帳は使えると昨日の電話口で聞いた。

最寄りのATMに向かい、通帳でお金をおろそうとするも、できない。なぜかキャッシュカードと一緒じゃなければおろせないタイプの通帳だとか、平日しかおろせない、そもそも現金すらも持っていない、おしまいである。

GWが終了した。

関係各所に連絡を入れる、親へ連絡、彼女へ連絡、友人へ連絡、どうにかして月曜日に帰ろうかと思ったが、その気力も無くなってしまった。

いろいろな予定が崩れ去った。

しかし、だ。

ある意味それはそれでよかったのかもしれない、と思うようになったのも、東京に来てから3ヶ月経つが、なんだかんだゆっくりと一人の時間を過ごすようなこともなく、ゆっくりと自分の時間を過ごすことができているからだ。

 今回の財布紛失という、かなり大きなダメイジではあったが、そのような大切な時間をもらったのかもしれないとあれから二日経ってそう思えるようになった。

このまま元のスケジュール通りバタバタと遊んでいてはおそらく感じることのできなかったであろう、このゆったりとした時間を感じたことは、他には変えがたいものなような気がする。

積ん読している本を読み、登録しっぱなしだったhuluのドラマを一気見し、撮り溜めしていた録画を見たり、丁寧に米を炊いてみたり、ゆっくりとお茶を入れてみたり、最近回数が減っていたtwitterでつぶやいたり、時間をかけて掃除をしたり。

やることはいっぱいだ、そもそも俺は遊ぶことよりも優先してすべきことのほうが多いな、そう感じた。

中途半端な自分が、将来のことについて考えてみたり(なんとなく日々の忙しさでごまかしていた部分)、今の仕事を続けるか真剣に考えたり。このGWはそのためにあったのではないかとすら思い始めてきた。

東京に来る前にやりたいと思っていたことも、東京じゃなくてもできるし、東京ではやりたくない、そうだったんだよな、思い出した。

なんのために東京に来たのか、よくわからないままにきた。

きてすぐに思ったけどね、結局は自分が変わらない限り環境を変えても同じだって。

そういうことを気づかせるために財布を無くしたんだというのならば、それは、とても安いもんなのかもしれない。

 

命があるだけ良かった。