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HARADAプライベイト

見ろ、あれが俺らが探していた両国国技館だ。見ろ、あれが俺らが憧れた力士だ。見ろ、あれが俺らが恋い焦がれたちゃんこ鍋だ。みろ、あれが俺らが求めていた力士の(やけに美人な)嫁だ。

糞の御話

十二指腸潰瘍になった。

(「なった」というと俺自身が十二指腸潰瘍になったかのようだけどそうではなく、十二指腸潰瘍を「わずらった」とするのが良さそうだ。)

 

※後半は糞の話ですので気をつけてください。

 

ことのホッタンは(ホッタンってなんかかわいい、ホタテみたい)昨年2015年の10月ごろに受けた健康診断である、特に自覚症状はなかったが胃の判定が良くなかった、「萎縮性胃炎」の疑いありと診断された。胃炎というワードで思い出したのが、数年前に胃が痛くて眠れない時があったことだ、その時は病院へ行き症状を伝えたところ、胃炎でしょうと診断され胃薬を飲んだ事があった。その胃痛はすぐに治った。

 

診断結果を読んで、あの時の胃炎がさらにひどくなったのかと少し落ち込んだ。自覚症状はないものの、いろいろあって引越しをしなくてはならなくなり、引っ越す前に一度御医者様に診てもらおうという事で内科へ、雑居ビルの二階にある内科へ、人が全然来なくて少し不安になる内科へと足を運んだ。

 

受付で諸々の手続きを済ませると、隣の部屋の奥の方から私を呼ぶ声がかすかに聞こえた、その声が聞こえた方へ向かってみると、白衣を着て医者のコスプレをしたおじいさんが椅子に座っている。そのおじいさんが私にこう聞いてきた、

 

「どうされました?」

 

私とそのおじいさんの二人だけしかいない小さな病院の診察室で、そのおじいさんは少し震えたような、でもしっかりした口調で私に聞いてくるのである、

 

「どうされました?」

 

診察室の外から受付の看護師さんの声が聞こえた、どうやら新しい患者が来たようだ、なんとなく安心した。ちゃんと来るじゃないか患者が。大丈夫な先生なんだな、この人は。心のどこかで疑っていた自分を殺したい、いや殺すのはちょっとやりすぎか、半殺しにしたい、いやいやそれもちょっと重たいな、ぶん殴りたい、ん〜ちょっとそれもなあ、そもそも暴力はよくないよなあ、今の時代は叱って育てるよりも褒めていいところを伸ばしていく方が良さそうだから、心のどこかで疑うこともできるだけポジティブに捉えるようにした方が良さそう。そんなことはさておき、おじいちゃん先生は私の目をじっと診つめている。

 

「どうされました?」

 

私がだんまり決めこみ状態だったことをおじいちゃん先生は見透かしていたのだ。おじいちゃん先生の単一質問攻めに耐え切れず、私は全てを話した、生まれ故郷・家族構成・出身校・性別・経験人数・視力・銀歯の本数 他、、ひととおりを話した頃には、私の顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。おじいちゃん先生は、笑顔でもなく真顔でもない、仏の微笑みのような今まで見たこともない表情で私の話を聞いてくれた。私はそれだけで救われた。もう死んでもいい、そう思えるほど私は満ち足りていた。そんな私を一点に見つめ、おじいちゃん先生はこうおっしゃった。

 

「どうされました?」

 

これは輪廻か?いや違う、おじいちゃん先生は私に何かこの質問でメッセージを送っているのではないだろうか、そう、「何をしにこの病院へ来たのか?」と、その答えが分かれば私の悩みは解消されるはずである。私は意をけっしておじいちゃん先生に話した。健康診断を受けたこと、胃の判定が悪かったこと、以前胃痛で苦しんだこと。そのすべてをおじいちゃん先生にぶつけた。話を聞き終えたおじいちゃん先生はニコリともせずに私の二つの眼をしっかりと捉え、

 

胃カメラをした方がいいかもしれない、ピロリ菌とかあったら後々大変なことになる」

 

やっと話が進んだ、そういうわけで胃カメラを使うことになった。別室に連れられた私は看護師さんに何かの液体を飲むようにと指示され、飲んだ。スポーツ系ドリンクのような味わいのその液体は、飲んだ直後に私の口から喉の感覚をマヒさせた。続けて利き腕を聞かれた、

「左です」

そう言うとおもむろに私の右腕をむんずと掴み、一言。

「フワーッとした感じになりますよ」

言い終わる頃には注射針は私の腕の中に刺さっていた。 

直後である、本当にフワーッとし始めたのである、これが極楽かというほどの浮遊感を味わっていると、おじいちゃん先生が中へ入ってきた、いよいよ胃カメラが私の体の中でおどり回るのだ、おじいちゃん先生に横になってと言われる、やさしい言い方だった。勝手なイメージで鼻から入れるものだと思っていたが、口からの挿入であった、初めて私の体の中に入る胃カメラは、見た目よりも太く感じ、喉のところでつっかえた、よだれがたくさん出た。おじいちゃん先生はさながら福山雅治のようなやさしい口調で「力を抜いて」と私に何度も話しかけた、おじいちゃん先生に言われるがまま力を抜くと、胃カメラが奥の方にグリグリと入っていくのがわかった、よだれがたくさん出た。

 

おそらく、胃カメラが胃まで到達したのだろう、おじいちゃん先生の動きが鈍くなった、そしてこう言った

 

「十二指腸に穴が空いている」

 

苦し紛れにカメラの映像をうつした画面をみると、確かに胃に穴のようなものができていた、初めて見る自分の内臓に穴が空いている。結構ショックだった。

 

胃カメラを終え、診察室に戻り、ピロリ菌の結果発表。

 

検査液がピンク色になっていればピロリ菌があると言われるその検査液が、これでもかというほどにピンク色になっている、もはやショッキングピンクだった。やたら写真を撮るハイテンションな夫婦がここへ来てもおかしくはない状況であった。

 

十二指腸潰瘍と診断された、まずはピロリ菌の除去のための薬をたくさんもらった。一週間分、毎日一回づつ飲んだ。飲み始めるとすぐに下痢が始まった、おじいちゃん先生いわく、この薬はピロリ菌の除去だけでなく、その他の腸内の善玉菌と呼ばれる良い菌も除去してしまうらしく下痢になってしまうという。

 

一週間後、おじいちゃん先生の元へ向かった私は下痢について熱く語った。ひどい下痢だと。それを聞いたおじいちゃん先生はビオフェルミンを出しておくからと言った。

 

ビオフェルミン

 

聞いたことがある、CMか何かで見たけど、ビオフェルミンが整腸剤ということは知らなかった。その時初めて知った。

ビオフェルミンを飲み始めると、普通の糞が出るようになった。薬の効能を感じることができた。おじいちゃん先生には、2週間分のビオフェルミンをもらったが、普通の糞が出るようになって安心した私は3日でビオフェルミンを飲むのをやめてしまった、するとあら不思議、またすぐに下痢になってしまった。

 

おじいちゃん先生の教えに従い、しっかりとビオフェルミンを飲み始めると、またしっかりとした糞が出るようになった、あまりにしっかりしすぎたのか、だんだんと糞が出てこなくなってきた、便秘気味になった。

 

そして今、またビオフェルミン離れが始まった。また少し、糞がほぐれ始めた。くんずほぐれつとはこのことかと惚れ惚れした。

 

「くんずほぐれつ」

 

kotobank.jp

 

実際には意味が違うらしい、ご愛嬌。